階段を下りるときや立ち上がる瞬間に膝がうずく症状は、中高年にとても多く見られます。背景として最も多い原因が、変形性膝関節症です。日本の大規模調査であるROADスタディでは、X線で膝に変形が確認される人は2000万人を超えると推計されており、決して珍しい病気ではありません。
多くの方がまず気にするのは、「治療すれば治るのか」という一点でしょう。結論から申し上げると、いったんすり減った軟骨を元どおりに戻す方法は、現在の医学では確立されていません。ですが、打つ手がないという意味ではないのです。
治療の目的は、痛みをやわらげ、進行をゆるやかにし、自分の脚で歩ける生活を長く保つことにあります。適切な治療を早く始めるほど、効果は積み上がっていくでしょう。ここからは、変形性膝関節症の治療の全体像を、保存療法から手術まで順を追って整理します。膝の痛みが気になり始めた方は、蕨セントラル整形外科にもお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
蕨セントラル整形外科 院長 宮沢 知修
日本整形外科学会認定 整形外科専門医/日本スポーツ協会公認 スポーツドクター/運動器リハビリテーション認定医
埼玉医科大学を卒業後、朝霞台中央総合病院、虎ノ門病院、坂戸中央病院などに勤務。2025年4月より蕨セントラル整形外科の院長を務めています。整形外科専門医として、骨や関節、筋肉、神経といった運動器の痛みやけがの診療にあたっています。
本記事は、蕨セントラル整形外科の院長である宮沢知修医師が、医学的な観点から内容を確認しています。
変形性膝関節症とはどんな病気か
膝の関節は、太ももの骨とすねの骨が向き合い、その表面をなめらかな軟骨が覆うことで、痛みなく曲げ伸ばしできる構造になっています。変形性膝関節症は、加齢や負担の積み重ねで軟骨が少しずつすり減り、関節に炎症や変形が起こる病気です。
発症には複数の要因が重なります。加齢に加えて、体重の増加、筋力の低下、O脚などの脚の形、過去のけがや半月板の傷みなどが背景になり、女性に多い傾向も指摘されてきました。
症状は段階を追って進みます。初期は、動き始めや長く歩いた後に痛む程度で、休めば楽になることがほとんどです。中期になると、階段や正座がつらくなり、膝に水がたまって腫れる場面も増えてきます。進行した末期では、安静にしていても痛み、脚がO脚に変形して歩きづらくなることもあるでしょう。
正しい治療の出発点は、正確な診断にあります。整形外科では、問診や触診に加え、レントゲンで関節のすき間や骨の変化を確かめます。必要に応じて、MRIで軟骨や半月板の状態も調べていくでしょう。似た症状を示す関節リウマチや痛風などと見分ける意味でも、自己判断ではなく一度の受診が確かな近道になります。
治療は段階的に組み立てる
変形性膝関節症の治療と聞くと、手術を思い浮かべる方が少なくありません。ところが実際の進め方は、思い浮かべる順序とは逆からはじまります。
治療の原則は、体への負担が少ない方法から段階的に組み立てることにあります。まず土台になるのが、運動療法を中心とした保存療法です。多くの方は保存療法で痛みが落ち着き、日常生活を取り戻していきます。保存療法を続けても効果が乏しく、日常生活に大きな支障が残る場合に、はじめて手術が検討されます。
なぜ、いきなり手術ではないのでしょうか。膝の状態は人によって大きく異なり、同じレントゲン所見でも痛みの強さや生活への影響はさまざまだからです。まず保存療法で反応を見ながら、必要な人に必要な治療を重ねていきます。段階を踏む進め方こそが、体への負担と効果のバランスをとる現実的な道になります。
日本整形外科学会が示す診療の考え方でも、運動療法と減量は治療の基本として位置づけられてきました。
保存療法でできること
保存療法は、手術をせずに症状をやわらげ、進行を抑える治療の総称です。柱になるのが運動療法であり、そこに生活の見直しや、薬物療法や注射、装具を組み合わせていくのが基本です。
運動療法の中心は、膝を支える太ももの前側の筋肉、大腿四頭筋を鍛えることにあります。筋肉がしっかり働けば、関節にかかる衝撃をやわらげ、膝を安定させられます。「痛いから動かさない」と過ごすうちに筋力が落ち、かえって膝の負担が増して痛みが強まる悪循環に陥る方も少なくありません。理学療法士による運動器リハビリテーションでは、痛みの状態を見ながら、一人ひとりに合った運動方法と量を組み立てていきます。
体重の管理も、運動療法と並ぶ大切な土台です。歩くとき、膝には体重の数倍もの力がかかるといわれ、わずかな減量でも負担は目に見えて軽くなります。無理な食事制限ではなく、続けられる範囲で少しずつ整えることが長続きのコツです。
痛みが強い時期には、薬物療法が支えになります。消炎鎮痛薬の内服や外用薬で炎症と痛みを抑え、運動療法に取り組みやすい状態をつくります。胃腸や腎臓への影響に配慮しながら使うため、市販薬を漫然と続けるより、医師の管理のもとで用いるほうが安心でしょう。
関節内へのヒアルロン酸注射は、関節の動きをなめらかにし、炎症をやわらげる目的で行われます。効き方には個人差がありますが、痛みが和らぐことで運動療法を進めやすくなる方も少なくありません。
物理療法や装具も、症状を支える役割を担います。温熱療法で血流を促して痛みをやわらげたり、サポーターや足底板で膝にかかる負担のかたよりを整えたりします。杖を使って荷重を分散する工夫も、進行した膝には有効です。
薬や注射、装具は、単独で使うより運動療法を土台に組み合わせることで力を発揮します。どの方法をどう組み合わせるかは、膝の状態と生活によって変わってくるため、専門家と相談しながら進めていくとよいでしょう。
手術という選択肢
保存療法を尽くしても痛みが強く、日常生活に大きな支障が続くとき、手術が選択肢に入ります。手術のタイミングに絶対の基準はありませんが、痛みで歩ける距離が短くなる、夜も痛む、仕事や趣味を諦めざるを得ないといった状態が、ひとつの目安といえるでしょう。
膝の手術には、大きく二つの方向があります。ひとつは、自分の関節を残す骨切り術です。すねの骨を切って角度を整え、傷んだ側にかかる荷重を健康な側へ移す方法で、比較的若く活動的な方に向くことがあります。もうひとつは、傷んだ関節の表面を人工の部品に置き換える人工膝関節置換術です。除痛の効果が高く、進行した変形に対して広く行われています。
近年は、再生医療という言葉を耳にする機会も増えました。ただし、変形性膝関節症に対する一部の再生医療は、公的医療保険の対象外であったり、効果の評価が定まりきっていない部分があったりします。関心を持つのは自然なことですが、費用や科学的な裏づけを冷静に確かめ、担当医とよく相談したうえで判断していただきたい領域です。
どの治療が向くかは、変形の程度や年齢、活動量、持病によって変わります。手術が必要な段階かどうかを見きわめること自体も、整形外科の診療の一部です。迷ったときは、まず膝の状態を診てもらうところから始めるとよいでしょう。
自分でできることと、治療を続けるコツ
治療の効果を高めるうえで、日々の過ごし方の見直しは欠かせません。ただし、セルフケアだけで変形そのものを元に戻せるわけではなく、目的は進行を抑えて症状をやわらげることにあると理解しておくと、取り組みの方向がぶれません。
自宅では、太ももを鍛える運動が基本になります。椅子に座って片脚をゆっくり水平まで伸ばし、数秒とめてから下ろす運動は、膝に負担をかけずに大腿四頭筋を鍛えられます。あわせて、正座や深いしゃがみ込み、重い荷物の持ち運びなど、膝に強い負担をかける動作は控えめにしたいところです。
冷えると痛みが増しやすいため、ふだんは膝を温めて血流を保つと楽になります。ただし、急に腫れて熱を持つ時期は炎症が強い状態であり、冷やすほうが適しています。温めるか冷やすかの判断に迷うときは、自己流で決めず医師に確かめると安心です。
痛みを我慢して動きすぎるのも、まったく動かさないのも、どちらも膝には良くありません。痛みと相談しながら続けられる範囲を保つことが、遠回りに見えて最も確実な近道になります。
変形性膝関節症の治療を考えるなら
変形性膝関節症の治療は、軟骨を元に戻すことではなく、痛みを抑えて進行をゆるめ、自分の脚で歩ける毎日を長く保つことを目指します。中心にあるのが、運動療法を土台とした保存療法です。早く始めるほど、膝を守れる時間は長くなります。
蕨セントラル整形外科は、理学療法士や作業療法士による運動器リハビリテーションを軸に、お子さんからご高齢の方まで、膝をはじめとする運動器の痛みに向き合ってきました。蕨駅から徒歩8分、無料駐車場もそなえていますので、通院を続けやすい環境です。
階段や立ち上がりで膝が痛む、正座がつらい、痛みが長引いているなど、思い当たる症状がありましたら、我慢を重ねる前にご相談ください。膝の状態を確かめたうえで、一人ひとりに合った治療とリハビリをご提案します。

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