頸部・肩の疾患
反復性肩関節脱臼
(recurrent dislocation of the glenohumeral joint)
肩関節は反復性脱臼がもっとも頻発する関節です。
一般に外傷性肩関節脱臼は前方脱臼が多いので、反復性脱臼もまたほとんどが前方脱臼です。10歳代の外傷性脱臼の90%以上、20歳代で80%、30歳代で50%が反復性脱臼へ移行し、その70%以上が2年以内に初めての再脱臼を経験します。
原因として、初回の脱臼時に関節を構成している骨の剥離骨折や靭帯の断裂、筋や靭帯の弛緩、延長がおこり肩関節の安定性が悪くなるとされています。
症状
若い年齢層に多く、男女比は4:1といわれていますが,全身的な関節弛緩症を認めることもあります。脱臼を起こしていないときはほとんど無症状か軽い倦怠感を訴えることがあります。
常に再脱臼しないかと心配しています。
投球動作やテニスのサーブ動作で容易に脱臼し痛みを来たすので、そのような動作を避けることが多いです。
検査
徒手的にanterior apprehension test(脱臼不安感テスト)を行います。
関節遺影では関節包の弛緩、拡大を認めます。
最近では関節遺影後CTおよびMRIを行い、確定診断には関節鏡が用いられています。
治療
外傷性脱臼後3~6週の固定とその後の運動療法によって反復性脱臼へ移行することは予防できるといわれています。
反復性脱臼の治療法として、保存的に筋力増強訓練を行いますが、根治的させるには手術を行うことが多いです。手術法として150以上の手技が発表されています。
棘上筋腱石灰性腱炎
(supraspinatus calcific tendinitis)
加齢などにより変性した、インナーマッスルであり肩の上のほうにある棘上筋の腱内に急速な石灰沈着を起こします。
石灰沈着は白色、泥状で二次的に直上の三角筋下滑液包(関節の動きをよくする液が入っている袋)へ拡がることがあります。
急性に発症し、部分的に強い痛みや熱をもつこともあり、白血球の増多も認められます。痛みは手までくることがあります。
2~3週で三角筋下滑液包へ吸収され消失しますが、症状の強いときは穿刺,吸引しステロイド剤を注入することによって軽快します。
肩(回旋筋)腱板断裂
(rotator cuff tears)
腱板は肩関節のほとんどすべての運動に際して圧迫・牽引・摩擦をうけ断裂する可能性があります。すなわち前方・後方挙上(たとえば投球動作)、垂直方向への圧迫(たとえば手をついて倒れたとき)、重量物挙上、回旋運動などです。また肩関節腱板付着部への直達外力によっても断裂しやすいです。もっとも損傷されやすい腱は棘上筋腱です。
棘上筋は生体内で2つの骨(肩峰および上腕骨頭)に挾まれた唯一の筋であり、肩関節外転時には肩峰、烏口結節靭帯によって圧迫、摩擦をうけやすく、筋自体も回旋筋群の中ではもっとも筋腹が短く腱性の部分が長いです。さらにその大結節付着部付近の血行は乏しい(critical zone)。従って年齢とともに変性、(とくに硝子変性)に陥りやすく、断裂を起こしやすいです。
従って、腱板断裂は変性腱板に軽微な外力(例えば打撲)が加わって発生する場合と、活発な動作によって発生する場合とがあります。
分類
腰板断裂は滑液包側、関節包側、腱内全層断裂に分けることができ、関節鏡下に鑑別することが可能です。しかし手術を要するような患者は、ほとんどすべて全層断裂であって、水平断裂horizontal tear、垂直断裂vertical tear(以上第1度)、混合断裂(第II度、腰板の1/3の断裂)、完全断裂(第III度、上腕骨頭が完全露出、“billiard”balltear)に分けられます。腱板のうち、棘上筋腱が先ず断裂し、隷下筋腫(後方)、肩甲下筋(前方)へ広がります。
症状
主症状は疼痛と脱力である。肩の運動時に疼痛と脱力を訴え、他動的に腕を横に広げてあげようとすると、挙げる途中で痛みがでてきてあるところを過ぎると痛みが消失する(肩関節外転50~120)(painful arc syndrome)。夜間に痛みがでてきて患側の肩を下にしてねることができないことがあります。
診断
関節鏡や関節造影、MRIなどで診断します。
治療
断裂した腱板そのものの自然修復は期待できないので主体は手術療法になります。
インピンジメント症候群
(impingement syndrome)
症状
夜間に増強する疼痛。痛みのため肩関節を動かさないので、五十肩に類似する関節拘縮を伴うことがあります。検者が片手で肩甲骨を固定し、他方の手で患肢を軽度内旋位のまま長軸に沿って押しつつ他動的に挙上させると疼痛が再現します(impingement test)
病態
腕を横に広げる動作により、肩の腱板と肩の関節の潤滑油をためる袋(肩峰下滑液包)は肩甲骨の上腕骨の間で挟まれてしまいます。このようなことが長期間続けられると腱板の慢性炎症と慢性肩峰下滑液包炎が発生します。
治療
ステロイドの肩峰下滑液包への注入。ときに肩峰形成術(肩峰前下面の切除)を要します。
肩関節窩上関節唇複合損傷【SLAP病変】
(Superior labrum both anterior and posterior lesion)
症状
投球時やバレーボールのスパイク時の肩の違和感。しかし投球は可能なことが多い。そのせいか放置されることが多く二次的に前方不安定性に発展するなど多彩な症状を呈していることが考えられます。
病態・原因
肩関節上方は関節唇と上腕二頭筋長頭腱起始部の複合体で構成されています。投球動作やスパイク動作の繰り返しによる肩の使いすぎや、ベーススライディング時に突き上げが作用すると損傷されやすいです。
診断
関節鏡検査で確定診断します。
治療
投球動作の一時中断しフォームの点検を行い、腱板機能訓練を行う。関節鏡にて手術を行うこともあります。
五十肩
症状
肩関節の痛み、関節の動きが悪くなります(可動域制限)。運動痛といって動かす時に痛みがありますが、あまり動かさないでいると肩の動きが悪くなってしまいます。髪を洗ったり、服を着替えることが不自由になることがあります。夜間痛という夜にズキズキする痛み、ときに眠れないほどになることもあります。
原因
中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。関節を構成する骨、軟骨、靭帯や腱などが老化して肩関節の周囲の組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります。(拘縮または凍結肩)
診断・検査
圧痛の部位や動きの状態などをみて診断します。肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症のほかに、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性滑液包炎、腱板断裂などがあります。これらは、レントゲン撮影、関節遺影検査、MRI、超音波検査などで鑑別します。
治療
病態や病期を考慮しておこなわれます。自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、癒着して動かなくなることもあります。急性期には、三角巾、アームスリングなどで安静をはかり、消炎鎮痛薬の内服、注射などが有効です。急性期をすぎたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います。早期回復を望む場合や経過が長い場合は「サイレントマニピュレーション」を実施します。
振り子運動
立った状態で腰をまげ、片手(痛くない方)を机や椅子の背もたれにつきます。痛いほうの腕を脱力し、ぶらんぶらんの状態にします。足は前後に開いておくと良いです。その状態で身体を揺らし脱力させた腕を振ります。500グラム位のおもり(ペットボトルに水をいれた物など)を持って行ってもいいでしょう。下げた腕の力で振るのではなく、身体をゆすって動かす事と痛みのない範囲で動かす事がポイントです。
頚椎症
症状
-
上肢の脊髄症状
手のこわばり感、すばやい動作の障害、巧緻動作(指先の細かな動作)の障害、手指の感覚障害、筋力低下、腱反射の亢進や病的反射の出現。
-
上肢の神経根症状
肩甲骨から腕にかけてのびりびり感、痺れ感、筋力低下、筋の萎縮、腱反射の低下。
-
局所の症状
首や肩甲骨付近の痛みやこり。首を動うごかすと痛みが増強。
-
下肢の脊髄症状
下肢のびりびり感、感覚障害、歩行障害(もつれるなど)、こわばり、腱反射亢進、病的反射の出現。
-
膀胱直腸障害
排尿障害や排便障害
原因
頚椎の退行変性により骨棘(骨のとげ)が形成され、加齢とともに徐々に大きくなっていき、それにより脊髄や神経を通す穴が狭くなり圧迫症状として、脊髄症や神経根症を生ずることになります。
診断・検査
- レントゲン撮影
- MRI検査
- CT検査
- 脊髄造影
- 電気生理学的検査:筋電図や神経伝達速度を使って、2箇所以上の椎間に病変があるときどこが主な病巣かある程度診断できます。
治療
- 薬物療法:消炎鎮痛剤、ビタミンB製剤、筋弛緩剤
- 装具療法:頚椎カラーなど
- 理学療法:首を軽く前にまげての牽引療法や温熱療法
- 手術療法:症状により適切な方法が選択されます。
良い姿勢を保ち、首にかかる負担をできるだけ減らしましょう。
上肢、下肢ともに筋力よりも巧緻動作やすばやい動作、歩行速度やバランスが障害されやすいです。
腕・手の疾患
キーンベック病(月状骨軟化症)
症状
- 手首を動かすと痛みがでます。
- 腫れます。
- 握力が低下して、動きが悪くなります。
原因
- はっきりとわかっていません。
- 手首にある月状骨(手首の真ん中近くにある骨)がなんらかの原因により血行障害がおき、つぶれてしまう病気です。
- 手首に常に強い力が加わる職業のひとによくみられます。
診断
- レントゲン写真と症状にて診断します。
- MRIでより詳しく分かります。
治療
装具などで固定、安静。
この場合、治療は長期になるので手首を使わない環境を整備する必要があります。
治らない場合、手術が行われることもあります。
手根管症候群
(carpal tunnel syndrome)
手根管症候群とは、手関節にある「手根管」というトンネルの中で、正中神経が圧迫されて発症する絞扼性神経障害(神経が絞めつけられたり圧迫を受ける障害)です。
手根管とは手根骨と強靭な横手根靭帯より構成されていて、その内に正中神経が9本の屈筋腱とともに走行しているため絞めつけられやすいと考えられています。
症状
- 親指、人差し指、中指、薬指の半分のしびれと「チクチク」とした痛み。
- つまみ動作が困難になります。
- 親指の付け根の母指球が平べったくなります。
- 夜に痛みが強くなります。
原因
一般的に女性で利き手のほうがなりやすいです。
よく手を使う方や危険な因子として、糖尿病、関節リウマチ、人工透析、
甲状腺機能低下症、妊娠、骨折をやったことがある、ガングリオンなどの軟部腫瘍、末端肥大症などがあります。
診断
自覚症状や知覚機能検査、運動機能検査、各種誘発テストを行い診断します。
補助的にMRIや電気生理学的検査を行うこともあります。
治療
保存的治療として装具療法や薬物療法(ステロイド注射)、物理療法があります。
手術療法として、手根管を開放するような手術が効果的で根本的な治療になります。
ドゥケルバン病、デケルバン病、
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
症状
親指の根元にはいくつかの腱がついていますがそのうちの二本(長母指外転筋腱と短母指伸筋腱)が手首の親指側にある腱鞘(腱の通り道)の中を一緒に通ります。
その腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり炎症が起こると痛みや腫れが出てきます。
原因
使い過ぎによる腱と腱鞘の間の機械的な摩擦による炎症が原因といえます。
妊娠時、産後や更年期の女性に起こることがおおいです。
これは、筋力が弱く大きな負荷が長時間加わることや、ホルモンのバランスの変化が原因です。
スポーツマンや指を良く使う仕事の人に多いです。例えばパソコンでの入力動作、家事をする主婦、楽器の演奏家、赤ちゃんを抱く母親、ゲームのやりすぎなどです。
診断
親指を握って手首を小指側に曲げると痛みが増します。これはフィンケルシュタインテストというドケルバン病のテスト方法です。
治療
安静位を保つために固定を行います。テーピングや装具を使って固定を行います。
腱鞘内に局麻剤入りステロイド注射をして炎症、腫れ、痛みを抑えます。
手術をする場合、重症の場合は腱鞘を切開し腱を開放する手術を行います。
デュピュイトレン拘縮
(デュピュイトラン拘縮、デュプイトレン拘縮、デュプイトラン拘縮)
症状
手掌腱膜の肥厚収縮(手のひらの中にある腱膜と呼ばれる繊維組織の束が縮んでしこりのようになる)、指の屈曲拘縮を起こし多少痛みを生じます。
45歳以上の男性に多く発症します。
男女比は7対1くらいです。
薬指や小指から症状は始まり、ゆっくり進行します。
皮膚がひきつれて指を伸ばしにくくなります。
最終的には指を伸ばすことができなくなり、鷲手と呼ばれる変形をおこします。
原因
詳しい原因はわかっていません。
遺伝性の疾患といわれていますが、遺伝子の異常があっても必ず発症するわけではありません。糖尿病の方に多く見られます。約50パーセントは両手に発症します。
診断
腱の癒着や腫瘍などと区別する必要がありますが、典型的は指の変形と触診で診断します。
治療
手の運動や温熱療法が有効です。
日常生活上で支障をきたすようになると厚くなった手掌腱膜を取り除く手術が行われます。
術後はリハビリがとても大切になります。
へバーデン結節
症状
第2指(ひとさし指)から第5指(小指)にかけてDIP関節(第1関節)に腫脹(腫れ)がでてきたり指の関節に変形がでて痛みと可動域制限がでます。
痛みや変形のため強く握ることができなくなってきます。
原因
不明です。高齢者に多く出現します。
診断
XPで診断ができます。骨棘(骨のとげ)や関節の破壊像、関節の狭小化などの所見があれば診断できます。
リウマチと似ていますが、へバーデン結節はDIP関節(第1関節)のみの変形であり、リウマチは手指全体の変形になります。
治療
のみ薬、貼り薬、テーピングなどを行います。
保存的治療でも痛みがとれない場合や変形がひどくなる場合は手術療法の選択もあります。
橈骨遠位端骨折、コーレス骨折、
colles骨折
症状
手首に強い痛みがあり、腫れが強く出ます。変形が見られることもあります。
指に力が入らず、骨折部は不安定です。
原因
骨折の中でもっとも頻度の高いものの1つです。
中年以降の女性が転んで手のひらを突いて受傷することが多いです。
同時に小指側の骨(尺骨茎状突起)が折れることもあります。
治療
徒手整復(引っ張ったりして骨を元の位置に戻す)して固定します。その際麻酔を使うこともあります。
初めは副木のようなもので包帯固定し、その後ギプスにて固定をします。
場合によっては手術療法が必要なことがあります。
固定中は努めて指は動かすようにします。高齢者の場合は肩や肘も早期に動かすようにしなければならない時もあります。固定除去後は関節が硬くなっていますのでリハビリによる可動域訓練や自宅にての体操が必要になります。
上腕骨外側上顆炎(Lateral Epicondylitis of Humerus)
またはテニス肘(tennis elbow)
症状
前腕を捻ったり手関節を伸ばしたりする時に、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。中年以降の40~50歳の人に多く、特にタオルを絞ったり、雨戸を閉めたりするときに痛みが増強します。
原因
テニス肘と呼ばれていますが、患者さんの多くはテニス愛好家ではありません。
使いすぎが原因との報告もありますが、多くは原因不明です。病態についても十分には分かっていませんが、手関節を伸ばす筋肉の中でも、主に短橈側手根伸筋の起始部が肘外側部で障害されると言われています。
検査
外来で簡単に行える疼痛誘発試験を参考にします。何れの検査法でも、肘外側から前腕にかけての痛みが誘発されたらテニス肘と診断します。レントゲンでは変化はありません、時に筋付着部にそって淡い石灰像をみることがあります。
治療
保存的療法:最初に行う治療です。
-
局所の安静を保ち、つまりは手関節を上に向けて固定などして手指の伸筋腱を弛緩させた状態で上腕骨外側での緊張を除去する、そして湿布や外用薬を使用します。多くの場合、これで数カ月以内に痛みが軽くなります。
-
局麻剤入りステロイド注射を行います。
-
テニス肘用バンドを装着します。(使用方法は医師にご相談ください)
手術療法:保存的療法で治らない時などに行います。筋膜切開術、切除術、前進術等があります。
野球肘
症状
投球時または投球後に肘に痛みがでます。肘の関節の動きが悪くなったり、動かせなくなることもあります。
原因
成長期においてのオーバーユース(ここではボールの投げすぎ)によって起こります。繰り返しボールを投げる事によって肘への過剰なストレスがかかり、骨同士がぶつかったり、靭帯が引き伸ばされたりして軟骨の損傷や剥離が起こります。
一言に野球肘といっても離断性骨軟骨炎、骨棘形成、靭帯損傷、上腕骨内側上顆障害、滑車障害、肘頭障害、橈骨頭障害と病態は多岐にわたります。
診断
レントゲン撮影やMRI検査
治療
- 投球の中止
- ただし中止して痛みがすぐなくなりその時点でよくなったと勘違いして自己判断でまた練習を行うと悪化する場合があります。
- 投球フォームの改善
- 装具による肘関節の固定
- 薬物療法
- 手術をすることもあります。
このような成長期のスポーツ障害の背景には、患者本人のスポーツに対する歪んだ認識として休むことへの罪悪感や人一倍に練習することによる休養不足、慢性的な疲労があると考えられます。近年、overuse(使いすぎ)による成長障害は増えてきております。このような障害があらわれたら、治療と平行して患者本人の意識を変えるカウンセリングを行い、十分な休息をとれる環境作りを整えてあげることも大切ではないかと考えられています。
腰・股の疾患
腰部脊柱管狭窄症
症状
この病気では長い距離を続けて歩くことができません。もっとも特徴的な症状は、歩行と休息をくりかえす間欠皺行(かんけつはこう)です。
腰部脊柱管狭窄症では腰痛はあまり強くなく、安静にしている時にはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたリ歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。しかし、少し前かがみになったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。
進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなったり、逆に尿が漏れることもあります。
原因
加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、椎骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されます。
脊柱管は背骨、椎間板、関節、靭帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。年をとると背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、靭帯が厚くなって神経の通る脊柱管を狭くして(狭窄)、それによって神経が圧迫を受け、神経の血流が低下して脊柱管狭窄症が発症します。椎間板ヘルニアに比べ中高年に発症することが多いようです。
検査・診断
単純レントゲン写真である程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRIや脊髄遺影などの検査が必要となります。下肢の動脈がつまって血行障害を生じた時にも似たような症状となることがありますので注意が必要です。
治療・予防
日常生活で姿勢を正しく保つことが必要です。神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前かがみになるとやわらぎますので、歩く時には一本杖をついたり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしましょう。そうすると楽に歩けます。また、自転車での移動も痛みが起こりにくく、良い運動になります。
保存存的治療としてはリハビリテーション、コルセット、神経ブロックや脊髄の神経の血行を良くする薬で症状が改善することもあります。しかし、歩行障害が進行し、日常生活に支障が出てくる場合には手術を行うこともあります。
変形性股関節症
症状
主な症状は歩行時の脚のつけ根の痛みです。症状が進むと変形と痛みが生じ、股関節の動きも制限され、靴下履き、和式トイレが困難になります。
初期
特に立ち上がり、歩き始めに脚のつけ根の痛みが生じ、歩いていると軽快してきます。
進行期
歩行時や動作中に痛みが強く、靴下履き、足の爪切り、正座や和式トイレなどが困難になります。
末期
足のつけ根が伸びなくなり、膝頭が外を向くようになります。また、左右の足の長さも違ってきます。
原因
変形性股関節症は先天性股関節脱臼の後遺症や股関節の形成不全、外傷、関節炎などにより関節の不適合や不安定性が起こり異常な摩擦が起こったりして骨や軟骨が壊され生じます。股関節には自身の体重の数倍の荷重がかかり、関節軟骨がすリ減り始め、それに対して修復作用が働き最後には骨の変形をきたします。親戚、親兄弟に先天性股関節脱臼や股関節疾患の患者がいる場合には股関節形成不全の可能性があります。
治療
投薬・運動療法・手術があります。手術は人工関節や関節を形成する手術などがあります。
予防と運動療法
痛みや運動が制限されると日常で動くことが少なくなり、肥満の原因やさらなる筋力低下を起こし状態を悪化させることにつながります。股関節は荷重がかかる関節ですからなるだけ荷重がかからないような姿勢で運動をするのがよいでしょう。いすに座った状態でゴムチューブなどをひざに巻き足を開くようにする運動や、横向きに寝て足を真上に上げる運動が一般的です。お尻の筋肉が働いてると意識しながら動くと効果的です。それとこういった痛みを持つ方は大抵足だけでなくお腹や背中、骨盤周囲の筋力も低下している場合が多いので、中でも特に姿勢を保つための筋肉を使うような運動もよいでしょう。体と足のストレッチは無理のない範囲でゆっくり持続的に伸ばしていきましょう。プールなどで水の浮力により股関節に負担をかけずに運動することもできます。
膝・足の疾患
半月板損傷(meniscus injury)
症状
半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にある軟骨の板で内側と外側で2枚ありクッションの役割を果たしています。
膝の曲げ伸ばしに痛みや引っかかりを感じることもあります。膝に水が溜まることもありロッキングという状態(膝が伸ばせなくなる)になることもあります。これは断裂した半月板の一部が顆間窩に挟み込まれるのが原因となることが多いです(かんとん症状)。
体重が負荷した状態で膝関節に異常な回旋力が加わると半月板が損傷を受けます。若年者の場合スポーツ中に膝を捻って損傷します。中高年の場合加齢により傷つきやすくなっている半月板に無理な動作や立ち上がり動作時に軽微な外力が加わって損傷する場合があります。
診断
MRI検査や徒手検査などで診断します。
治療
保存療法:投薬やリハビリで症状が改善する場合があります。手術療法:切除術や縫合術があります。
内側側副靭帯(MCL)損傷
(injury of the medial collateral ligament)
症状
膝を支点に下腿を外側に動かすと激痛を訴え、その際動揺が見られることがあります(外反動揺性)。
膝の内側に圧痛があります。
重症例だとほとんどの場合十字靭帯損傷を合併しており大量の関節内出血を認めます。
原因
膝の靭帯損傷では最も頻度が高く、膝に大きな外反力が加わって発生します。
コンタクトスポーツやスキーなどで受傷することが多いです。
治療
単独損傷であれば外反動揺性は小さいので装具装着などによる保存療法を選択します。6週間程度でスポーツ復帰が可能となります。十字靭帯損傷を合併したものでは手術療法を行うことが必要となります。
後十字靭帯(PCL)損傷
(injury of the posterior cruciate ligament)
バイク事故やスポーツ損傷にて膝から転倒し、膝を約90度曲げた状態で前方から脛の上端に外力を受けて受傷する場合が多いです。
乗用車の追突事故で膝を曲げて座った状態でダッシュボードなどに脛を打撲して受傷することもあります。(ダッシュボード損傷)
症状
膝蓋骨の下方に打撲による皮膚の損傷を認める場合があります。関節内出血による腫れがあります。仰向けに寝て膝を立てると下腿の下方への落ち込みが認められます。(サギング兆候)
スポーツ活動や階段昇降にて不安定感を覚えることがあります。
治療
多くの場合スポーツ復帰など可能なので大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法を第一選択とします。日常動作に不自由を感じている時には再建術を行うこともあります。
前十字(ACL)靭帯損傷
(injury of the anterior cruciate ligament)
原因
バレーボールやバスケットボール、サッカーなどのスポーツでジャンプの着地に失敗、方向転換、転倒などで強く膝を捻ると受傷しやすいです。
症状
受傷直後は激痛があり動けないことがあります。
時間が経つにつれて関節の中に血液が溜まり膝が腫れてきます。
時間が経過したものだとスポーツ活動時などに膝くずれ現象を起こすことが多くなります。
これを放置して膝崩れ現象を繰り返していると軟骨や半月板を損傷し膝の老化-変形性膝関節症へと移行していきます。
診断
MRIにて断裂の形態を把握して半月板断裂などの合併症の有無を評価します。
治療
あまりスポーツ活動を望まない中高年者には装具の装着や筋力強化を中心とした保存療法で経過を見ます。
一方スポーツ活動を望む方には腫れなどの急性期症状がおさまるのを待ってから手術療法を行います。手術は自分の組織(膝蓋腱やハムストリングス)を使った靭帯再建術を行うことが多いです。
術後のリハビリテーションは通常半年から1年かかります。装具を用いながら早期から筋力強化や関節可動域訓練を行っていきます。3ヶ月後くらいからジョギングが許可されることがあります。その後段階的に負荷が強く複雑な運動の練習をしていくことになります。
予防
ACL損傷は非接触型の受傷機転が多いため予防プログラムにより発生率を低下させる事が可能です。
- バランス
- 筋力
- 片足スクワット
- ロシアンハムストリングス
- ランジウォーク
- ジャンプ
- 両足垂直跳び-着地
- 片足前方跳び-停止
膝靭帯損傷
スポーツ外傷や交通事故などで膝関節の正常可動域を超えた動きを強制されるとその外力の方向に応じてさまざまな靭帯損傷を起こします。
受傷直後から急性期には膝の痛みと可動域制限があります。しばらくして血腫が溜まり歩きづらくなってきます。
急性期を過ぎると痛み・腫れ・可動域は良くなってきます。しかし損傷部位によっては膝の不安定感が目立ってくることがあります。下り坂やひねり動作の時にはっきりします。
不安定感があるまま放っておくを半月板損傷や軟骨損傷などを生じ慢性的は痛みや腫れが出現します。
膝の機能解剖-靭帯 半月板
膝関節(knee joint) は人体で最も大きな関節であり、大腿骨(femur)と脛骨(tibia)の間の大腿脛骨関節(femorotibial joint) (FTJ)、および大腿骨と膝蓋骨の間の膝蓋大腿関節(patellofemoral joint)(PFJ)に関節節を持ち,FTJはさらに内側(medial compartment)と外側(lateral compartment)に分かれています。その適合性は股関節の安定性が関節節の形状によって得られているのとは対照的に、その内的安定性は靭帯、半月板などを中心とした軟部組織によるところが大きいです。
脛骨と大腿骨の前後左右の動きは4本の靭帯により制御されています。大腿骨と脛骨の間には通常の軟骨のほかに内外関節面に各1つずつ半月板が存在しています。半月板は軟骨同様の弾力性のある組織からできており脛骨の関節面の周囲にあります。半月板はFTjの適合性をよくするとともに関節面にかかる荷重を分散させ過度な圧が関節軟骨にかかることを防いでいます。
変形性膝関節症
症状
膝の痛みと筋肉の萎縮、運動制限、水がたまることです。痛みは動きはじめにでてきて、特に内側に多くみられます。筋肉の萎縮は大腿四頭筋という太ももの筋肉、特に内側の筋肉に見られる場合が多いです。症状が進むと膝が完全に伸びなくなります。またO脚変形が生じます。
- 初期:立ち上がり、歩きはじめに膝が痛む(休めば痛みがとれる)
- 中期:歩くと膝が痛み、正座、階段の昇降が困難(動作が不自由)
- 末期:変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行も困難(日常生活が不自由)
原因
関節軟骨の老化、老化に伴う姿勢の変化、外傷、肥満、素因(遺伝子)などが考えられます。加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使いすぎによりすり減り、関節が変形します。
変形や痛みは膝にかかる力学的なストレスが原因です。そしてそのストレスは姿勢の変化と体重増加などによって生じます。その他、老化による骨自体の変形や代謝、内分泌も素因となりえます。
検査
問診や診察、特に触診で膝内側の圧痛、動きの制限、腫れ、変形などを調べ、レントゲンを撮影して診断します。必要によりMRIなとの検査も行います。
治療
- 薬物療法:外用薬(塗布薬や軟膏)、内服薬(消炎鎮痛薬)、関節内注射(ヒアルロン酸など)
- 理学療法:運動療法、物理療法
- 装具療法:専用の装具や足底板により適切な身体の使い方を学習できます。
- 手術療法:関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術など
予防と運動療法
膝の変形は力学的な異常なストレスと筋力低下が原因のひとつです。姿勢が変わると重心の位置が変わりその負担は膝にかかります。姿勢は骨盤や脊柱の筋力低下による姿勢保持機能の低下、と同時に骨盤や脊柱の筋肉やその他の組織の萎縮や短縮による柔軟性の低下によってわるくなります。よって個々によって違いはありますが骨盤、膝関節を中心とした全身的な姿勢筋の筋力強化、柔軟性の獲得が課題となります。
簡単な例として椅子に座って背筋を伸ばした状態で膝をあげる運動や、その状態で膝を伸ばして5秒止める運動、椅子に座った状態で骨盤を起こしたり寝かしたりする運動、仰向けに寝て、肘を床につき頭と上体だけ起こして背骨の上の方だけ曲げる運動などがあります。
日常生活では次のことに注意しましょう。
- 適切で適度な運動を日課とする。
- 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を強化する。
- 肥満であれば減量する。
- 正座をさける。
- 膝を冷やさない。クーラーなどに注意する。
踵骨棘
踵の骨には足底腱膜、拇趾外転筋、短趾屈筋、足底方形筋などが付着しており、その筋肉の牽引が繰り返し加わるとその起始部において炎症が生じて痛みがでます。
症状
- 歩いている時や立っている時の踵の痛みがあります。
- 男性より女性に多い。
- 外見的にはとくに異常はなく、熱感や腫れるということもあまりありません。
診断
レントゲン撮影での画像診断。
画像上変化を認めないこともあり、あくまでも踵の底部の圧痛を確認します。
治療
- 安静
- 歩行時、踵をつけないように(免荷歩行)
- 消炎鎮痛剤
- 踵をつけないような装具を装着します。
- 手術をすることもあるがほとんどは保存的に治療をすすめていきます。
偏平足
原因により、
- 先天性
- 外傷性
- 炎症性
- マヒ性
- 静力学性
これはどういうことかというと、発育に伴う体重負荷により縦アーチがなくなってしまうものです。
無症状のことが多いのですが、足関節の痛みやタコの形成、指の付け根の痛み、足の疲労感などを伴うこともあります。
治療
基本的に保存療法に(手術をしない)なります。
子供であればよく運動させて、はだしで歩かせ、運動療法を行います。
痛みがあって歩くのに支障がある方は装具療法として、足のアーチをつくるのを助けるアーチサポーターを靴にいれます。
足のアーチがないため、クッションとしての役目がなくなっているので、衝撃吸収パッドを入れます。
アーチ形成のテーピングなどもあります。あとは運動療法を行います。
運動療法はタオルギャザーといって、足の指でタオルを手繰り寄せるたり、持ち上げたりする運動です。
外反母趾
(hallux valgus)
症状
足の親指が人差し指のほうに曲がり、付け根の関節の内側が突き出してバニオン(滑液包の腫脹)を形成して痛みます。進行すると親指が人差し指の下に入り、人差し指の下にタコができます。
原因
圧倒的に女性に多く10才代に発症するものと40代の中年期に発症するものとがあり、前者には高頻度の家族内発生が認められます。解剖学的な要因として、扁平足など外反母趾になりやすい特徴があります。外的要因として最も重要なことは履物で先の尖ったハイヒールを履くと、足の甲の親指側の骨が内に反り、親指の付け根より先の指が先細りの閉鎖部分で外反位に強制されます。中年期には体重増加および筋力低下も発症要因になります。
治療
保存的に矯正体操や装具療法を行います。
変形がある程度進行したものでは無効で手術的な治療が必要になります。
予防
親指の付け根はフィットして先はゆったりした履物を選びます。
外反母趾体操―足のじゃんけん体操
両方の親指に輪ゴムをかけて足先を開く体操を行うなどです。
アキレス腱炎
症状
歩行時での踵からアキレス腱にかけての痛み。
アキレス腱自体の炎症やアキレス腱の周りにある筋膜との癒着、アキレス腱の動きを良くするための袋(アキレス腱下滑液包)の炎症などがあります。
原因
アキレス腱自体の柔軟性の低下
負荷の積み重ね:歩行時の異常な動作の繰り返しがアキレス腱にストレスを与え炎症を引き起こします。
治療
テーピング:やわらかいパッドを踵にあてテーピングで固定します。
足底板療法:踵を上げることによってアキレス腱の緊張をとります。

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