腕を上げると肩が痛む、服を着替えるときに引っかかる、夜に痛みで目が覚めるといった不調は、四十代から六十代にかけて多く見られます。いわゆる五十肩です。正式には肩関節周囲炎と呼ばれ、肩の関節を包む組織に炎症が起き、痛みと動かしにくさが現れます。
はっきりした原因が特定できないことも多く、加齢にともなう組織の変化に、肩を動かす機会の減少や糖尿病などの持病が重なって起こると考えられています。四十肩と五十肩は、発症する年代による呼び名の違いにすぎません。
多くの方が「そのうち自然に治る」と耳にしたことがあるでしょう。たしかに、時間とともに痛みが和らぐことは少なくありません。ですが、放っておくと、痛みが引いた後も肩が固まったまま動かしにくさが残ってしまう場合があります。
痛みや動かしにくさが落ち着くまでの期間には幅があり、数か月から一年ほど、ときにさらに長くかかることもあります。だからこそ、ただ待つのではなく、時期に応じたケアで回復を後押しすることに意味があるのです。
五十肩の治し方には、ひとつだけ外してはいけない原則があります。今が炎症の強い時期なのか、固まってきた時期なのかを見きわめ、時期に合った対処を選ぶことです。同じ「動かす」でも、やってよい時期と悪い時期がはっきり分かれます。蕨セントラル整形外科でも、肩の痛みの相談を受け付けていますので、お気軽にお声かけください。
この記事の監修者
蕨セントラル整形外科 院長 宮沢 知修
日本整形外科学会認定 整形外科専門医/日本スポーツ協会公認 スポーツドクター/運動器リハビリテーション認定医
埼玉医科大学を卒業後、朝霞台中央総合病院、虎ノ門病院、坂戸中央病院などに勤務。2025年4月より蕨セントラル整形外科の院長を務めています。整形外科専門医として、骨や関節、筋肉、神経といった運動器の痛みやけがの診療にあたっています。
本記事は、蕨セントラル整形外科の院長である宮沢知修医師が、医学的な観点から内容を確認しています。
五十肩の症状と、3つの病期
五十肩の症状は、大きく二つに分けられます。ひとつは肩の痛みで、もうひとつは腕を上げたり後ろに回したりする動きの制限です。とりわけ、安静にしていても痛む安静時痛や、夜間に強まる夜間痛は、五十肩でよく見られる特徴といえます。
そして治し方を考えるうえで欠かせないのが、症状が三つの時期を移り変わっていくという理解です。
最初に訪れるのが、炎症期と呼ばれる時期です。急性期とも言い、肩の炎症が強く、じっとしていても痛み、夜も眠れないほどうずくことがあります。数週間から数か月ほど続くと考えられており、この時期に無理に動かすと炎症を長引かせかねません。
炎症が落ち着くと、拘縮期に入ります。凍結期とも呼ばれ、痛みそのものは和らぐ一方で、肩の周りが固まり、腕が上がらない、後ろに手が回らないといった動きの制限が前面に出てきます。この時期の主役になるのは、固まった肩をゆっくりほぐしていく運動です。
最後が回復期です。少しずつ動く範囲が戻り、日常の動作が楽になっていきます。回復期に根気よくリハビリを続けられるかどうかが、動かしやすさをどこまで取り戻せるかを左右するといえるでしょう。
自分が今どの時期にいるのかを知ることが、正しい治し方への第一歩になります。痛みが強くじっとしていてもつらいなら炎症期、痛みは引いたのに動かしにくいなら拘縮期、と大まかに見当をつけられるでしょう。
病期に合わせた治し方
五十肩の治し方は、病期によってほとんど正反対になります。病期を取り違えると、良かれと思った行動が回復を遠ざけてしまいます。
炎症期にまず優先すべきは、痛みを抑えて肩を休ませることです。強い痛みや夜間痛があるうちは、無理に動かさず、肩に負担のかかる姿勢を避けます。整形外科では、消炎鎮痛薬の内服や外用薬で炎症をやわらげ、痛みが強い場合には関節内などへの注射で炎症を鎮めることもあります。夜間痛でつらいときは、寝るときに腕の下へクッションを入れ、肩前方のツッパリ感を減らすと楽になります。
痛みが落ち着いて拘縮期に移ったら、今度は動かす時期です。固まった肩を放置すると、そのまま可動域が戻りにくくなるため、痛みの出ない範囲で少しずつ動かしていきます。拘縮期に力を発揮するのが、理学療法士による運動器リハビリテーションです。肩だけでなく、肩甲骨や背中の動きも合わせて整えながら、一人ひとりの固まり方に応じて可動域を広げていきます。温熱療法で肩を温め、血流を促してから動かすと、動かしやすさが増すでしょう。
なぜ拘縮期には動かすことが治療になるのでしょうか。炎症でこわばった組織や関節を包む袋は、動かさないでいるとさらに縮んで固まります。痛みの出ない範囲でこまめに動かすことで、縮もうとする力に抗い、少しずつ伸びる余地を保てます。動かす量や強さの見きわめが難しいため、専門家の指導のもとで進めると安全です。
回復期には、取り戻した動きを定着させ、再び固まらないように運動を続けます。焦らず、それでいて止めずに続けることが、きれいに治すコツといえるでしょう。
やってしまいがちな失敗も、知っておくと役立ちます。炎症期に「動かさないと固まる」と焦って強く動かせば、炎症はかえって悪化しかねません。逆に、拘縮期になっても痛みを恐れて動かさずにいると、固まったまま回復が遅れてしまいます。時期を見きわめた対処こそが、遠回りを避ける近道です。判断に迷うときは、整形外科で今の病期を確かめてもらうと安心でしょう。
自宅でできるケアと、避けたい動作
治療と並行して、自宅でのケアが回復を後押しします。ただし、病期に合わせることが大前提であり、痛みが強い炎症期に無理をしないことが何よりも大切です。
拘縮期から回復期にかけて役立つのが、振り子運動と呼ばれる体操です。前かがみになって痛むほうの腕を自然に垂らし、力を抜いて前後や円を描くように小さく揺らします。腕の重みを利用するため肩に余計な力が入りにくく、固まった肩をやさしくほぐせます。痛みで顔をしかめるほど動かすのは逆効果であり、心地よく感じる範囲にとどめることが肝心です。振り子運動に慣れてきたら、壁に手を添えて指を少しずつ上へ登らせる運動や、タオルを両手で持って背中で上下に動かす体操も、肩の動く範囲を広げるのに役立ちます。いずれも痛みの手前で止めるのが原則です。
温めるか冷やすかも、時期によって使い分けます。炎症が強く熱を持つように痛む急性期は、冷やすほうが楽なこともあるでしょう。痛みが落ち着いた時期には、入浴などで肩を温めて血流を保つと動かしやすくなります。判断に迷うときは、自己流で決めずに医師へ相談すると確かです。
肩を動かさない生活が続くと、かえって固まりが進みます。日常のなかで、痛みの出ない範囲で肩を使い続けることが、思いのほか大切な治し方の一部になります。
五十肩と間違えやすい病気と、受診の目安
肩の痛みがすべて五十肩とは限りません。似た症状を示す病気がいくつかあり、自己判断で五十肩と決めつけて放置すると、別の病気を見逃すおそれがあります。
たとえば、肩を動かす腱が切れる腱板断裂は、五十肩と似た痛みや動かしにくさを起こしますが、対処の方向は異なるものです。肩に石灰がたまって激痛を起こす石灰沈着性腱炎や、首から来る神経の圧迫でも、肩の痛みが現れることがあります。いずれも見た目や自覚症状だけでは見分けが難しく、レントゲンや超音波、必要に応じてMRIといった検査で確かめることが欠かせません。
受診の目安として、次のような場合は早めに整形外科を訪ねることをおすすめします。強くぶつけたり転んだりした後に肩が上がらない、痛みが日に日に強まる、しびれをともなう、数週間たっても改善の兆しが見えない、といった状態です。放置して自然に任せるより、原因をはっきりさせてから治し方を選ぶほうが、結局は近道になります。
五十肩であっても、病期に合った治療とリハビリを受けるかどうかで、回復のなめらかさは変わってきます。市販薬で痛みをしのぐだけでなく、一度整形外科で肩の状態を診てもらう価値は十分にあるでしょう。
五十肩の治し方に悩んだらご相談ください
五十肩の治し方は、病期を見きわめ、時期に合った対処を選ぶことに尽きます。炎症期は痛みを抑えて休ませ、拘縮期から回復期は動かして可動域を取り戻していきます。順序を守れば、固まりを残さずに治していける可能性が高まるでしょう。
蕨セントラル整形外科は、理学療法士や作業療法士による運動器リハビリテーションを軸に、お子さんからご高齢の方まで、肩をはじめとする運動器の痛みに向き合ってきました。蕨駅から徒歩8分、無料駐車場もそなえていますので、リハビリに通い続けやすい環境です。
腕が上がらない、夜間の肩の痛みで眠れない、動かしにくさが長引いているなど、思い当たる症状がありましたら、我慢を重ねる前にご相談ください。肩の状態と病期を確かめたうえで、一人ひとりに合った治療とリハビリをご提案します。

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